命の恩人

朝は色んな出会いがあります。

いつもの通勤路。
ふとすれ違った男性…

……あれ……どこかでお会いしたような…

5メートルくらい通り過ぎて
やっと思い出しました。

「Kさんですか?」

………

あれは6月の初め

私は疲れ果てていることにさえ気づかないほど
疲れ果てていて
ノンは何に苛立ってるのか分からないけど
ずっとイライラしてた
そんな毎日でした。

毎朝2人で早めに家を出て
ノンを就労の場に送り出します。
私が仕事に遅れないように。

通勤途中いつも
大好きな車のタイヤやアンテナをいじって
寄り道し放題。
10分で着く所を
1時間たっても就労の場に着かない。
そんな彼を見かねての対応でした。

その代わり
帰りがどんどん遅くなっていました。
1時間かかるのはザラ。
2時間半かかったこともあります。

ただ遅くなるだけならいいのだけれど
手が口の周りが真っ黒。
おそらくタイヤや車の汚れを手でぬぐって
その手を口でなめていたからでしょう。

そのうち手に火傷やあざを作って
帰って来るようになりました。
それはきっと
停車して間もないタイヤ周りが高温になっていて
知らずに触ってしまったからでしょう。

でもあざは……?

時を同じくして
帰り道に立ち寄るコンビニの店長さんから
ノンが中学生にいじめられていたので
送って帰ってくださった…というお話を聞いていたので
不安は大きくなるばかりでした。
このコンビニにも大変ご迷惑をおかけしました。
トイレに異物を流したり
お店の商品を買わずに勝手に飲んでしまったり
そんな汚い手で
商品を触って陳列を変えてしまったり…

一体帰りにどこで何をしているんだろ?

就労の場に相談しても
きっと寄り道がノンのストレス発散になっているので
迎えに行かずに頑張ってくださいと言われ

そのうちストレスが爆発したのか
何かのきっかけで
就労の場で暴れてしまうという事件が起こり
私は呼び出され
これからは厳しい対応で臨みますと
職員さんに言われ…
(きっと虐待だと言われないようにでしょうね)

優しくておっとりのんびりしたノンに
何が起きているのか
全く分からないけれど
よそ様にケガを負わせてしまうことが
一番申し訳ないと思ったので
承諾しました。

そこからノンはますます荒れていきます。

家では絶えずイライラしていて
私に当たるようになりました
私もノン自身もあざが絶えない
つねにピリピリした空気が家にはただよい
ただ私は
ノンが家の中だけでも
少しでもゆっくりできるように
必死で環境を整えました。

ノンが就労の場に行っている間
私は、朝も夕方も
いつ携帯が鳴るかとビクビクしていました。
携帯が鳴ったら
ノンが何かしでかしたということ。
2ヶ月の間に
私は色んな所に何回謝りに走ったでしょう?
覚えてません。

あれは6月の初め

たまたま仕事がお休みだった私は
ノンより先に家に帰っていました。
そして帰って来たノンが手に持っていたのは
営業車のボディーに貼る
ある会社名と連絡先の書いてあるステッカー。
シールをはがすことにこだわりのある
ノンがやりそうなことです。
私は、これは見逃しちゃいけないと思い
「一緒に返しに行こう」
と取り上げようとしましたが
恐ろしい力で離そうとしません。
そこからもみ合い、なぐりあい、格闘の末
私はステッカーを持って
家の外に飛び出しました。

今ならば、どうしてそこまで…と思いますが
その時は必死でした。

当然ノンは追いかけて来て
家の前の道路でつかまり
またそこで2人で格闘していました。
きっとただならぬ状況だったんでしょう。
通りかかった車が
「どうしたの?大丈夫??」と
心配して何台も停まりました。
私の腕は
もうほとんど力の無くなってしまった状態で
こっからどうやって
このステッカーの会社までたどりつくか…
このまま殴り合ってたら
どっちかが車にはねられたり
側溝に落ちて死ぬのかな…なんて
変に冷静に考えていました。

すると一人の男性が車から降りてきて
ノンと私の間に入ってくれました。

それがKさんでした。

「どないしたんや!」

Kさんはおそらく
建築関係のお仕事をされているのでしょう
作業着で日焼けした顔で
ノンと向き合ってくれました。

「お母さんを殴ったらあかんやろ!!!」

ものすごい気迫でした。
ノンも私も一瞬たじろいで…
私は公衆の面前にも関わらず
ワンワン泣いて…涙が止まらなくなりました。
それまでどんなに辛くても
涙は出なかったのに。

でもノンは興奮してしまっていて
屈強なKさんにも
向かっていきそうな勢いです。

私は事情をKさんに話しました。
すると偶然Kさんは
ステッカーの会社の社長さんと知り合いとのことで
私が信頼するようにでしょう
スマホの連絡先に
ちゃんと会社名が入っていることを
私に見せてくださって
社長さんに連絡を取り
状況を説明してくださって
もういいから帰り、と
私たちを帰してくれました。

私は涙でグチャグチャになりながら
せめてお名前をお聞かせください、と言うと
「Kです」と言い残して去って行かれたのです。

…………

それは、6月の初め。
それからもノンの問題行動はおさまらず
結局、その就労の場を辞めました。

理由は問題行動のこともありますが
ノンは優しくて気のつくのんびりした
とってもいい子です。
そんなノンにまた戻って欲しかったからです。

そして今お世話になっている
施設のスタッフの皆さんのお陰で
ノンはあっという間に元の姿に戻りました。

ステッカーの会社には
事件当日にも本人と謝りに行きましたし
弁償させてくださいと言ったのですが
いいですよ(^^)と受け取ってくださらなかったので
もう一度お菓子を持って
本人と謝りに伺いました。
その時に社長さんの奥さんに
Kさんに是非ありがとうと伝えてください、
とお伝えしたのですが
もうきっとKさんとは
2度とお会いできないと思っていました。

それが今朝、偶然お会いできたのです。

初め、Kさんは
私のことを気付いておられませんでした。
無理もありません。
あの日は
ジーンズにTシャツの部屋着のまんま
化粧っ気もなく
グシャグシャに泣いていたのですから…

「お陰さまで、今は息子も落ち着いて
新しい場所で頑張っています」
「そうですか~よかったですね!」
「その節は本当にありがとうございました」

今日ほど
「ありがとう」が伝えられて
本当に良かったと思ったことはありませんでした。

もしあのまま
親子で頑張り続けていたら…
あの頃
こんなに毎日みんなに迷惑ばかりかけるノン
一緒に消えてしまった方がいいのかな…
そんなバカな考えが
よく頭をかすめていました。

だからKさんは命の恩人なのです

「お母さんを殴ったらあかんやろ!」

Kさんにとってはきっと
当たり前のことを言ってくださっただけなのでしょうが
そんな当たり前のことを
障害を持つノンに本気で言ってくれる人が
今まで誰もいなかった。

私もそれを聞いて、
間違った方向に頑張りすぎてたことに気づきました。

本当に本当にありがとうございます。
これからもボチボチのんびり
ノンらしく
私らしく
歩いていこうと思います。

☆このエピソードは事実ですが
あくまでも私サイドからの一方的な意見も
あると思います。
なので公開するか迷いましたが
あえて書かせていただきました。
どなたかを攻撃したり傷つけたりすることは
私の本意ではありません☆
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by karina0918 | 2014-09-09 22:16 | こども
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